「JAK阻害薬Q&A」常陽リビング5月号

Q 50代の女性です。アダリムマブで関節リウマチの治療を受けていますが効果が落ちてきました。内服薬で有効な薬剤はありませんか

尾登院長A 炎症性サイトカインを阻害するアダリムマブのような生物学的製剤の登場により関節リウマチの治療は寛解や治癒を目指せるような時代となっています。しかし、効果が減弱したり、生物学的製剤でも効果不十分の方もおられます。また、生物学的製剤は注射という形態を取らざるを得ず、面倒な一面もあります。内服薬で同様な効果を期待できる薬剤としては、炎症性サイトカインの細胞内の信号伝達に関与するヤヌスキナーゼを阻害するJAK阻害剤の開発が進んでいます。生物学的製剤が一つのサイトカインを抑制するのに対してJAK阻害剤はリウマチの悪化に関係する複数のサイトカインを抑制します。JAK1と3を抑制するトファシチニブとペフィシチニブ、JAK1と2を抑制するバリシチニブ、JAK1のみを阻害するウパダシチニブが現在使用可能です。有効性が高い薬剤ではありますが、帯状疱疹等の感染症リスクがあり、予防接種と手洗いやマスク、人混みを避ける注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症が現在問題となっています。重症化の一因は、ウイルスと戦う免疫が暴走し、高度の炎症を引き起こすサイトカインストームですが、JAK阻害剤はこのサイトカインストームを抑制可能であることから治験が行われ、新型コロナウイルス感染症での治療効果も期待されています。