「体軸性脊椎関節炎Q&A」常陽リビング10月号
Q38歳の男性です。数年前から腰痛があり、痛み止めやコルセットで治療を受けていますが改善しません。かかとや肩肘にも痛みがあります。
尾登院長A 腰痛の原因はさまざまです。レントゲンで変形が見られたり、MRIでヘルニアが認められたとしても、必ずしもそれが腰痛の原因とは言い切れません。動きや圧痛点、しびれの部位や筋力低下、血液検査、他の病変、心理的問題にも注意を払う必要があります。原因が見逃されている症例で比較的多いのが、仙腸関節炎です。
仙腸関節はおしりの先端から腰骨に向かって斜めの方向にあるわずかしか動かない関節で、外傷や加齢で障害が起きることが多いです。免疫異常が原因で慢性炎症が起ることもあり、これは「脊椎関節炎」と呼ばれます。乾癬に伴う関節症性乾癬、潰瘍性大腸炎に伴う腸炎性関節炎、泌尿器科疾患に伴うライター症候群、目の疾患であるぶどう膜炎を伴うものなどもあります。このうち「強直性脊椎炎」は脊椎全体が竹のようにつながってしまう疾患で、10代から40代の比較的若い男性に多く発症し、アキレス腱などの腱付着部に痛みを伴うこともあります。レントゲンで明らかにならない「体軸性脊椎関節炎」というものもあり、強直性脊椎炎の早期の状態と考えられます。最近では抗TNF抗体や抗インターロイキン17A抗体などの抗体製剤が有効であることがわかり、早期から治療することで、体が固まってしまう「強直」を防ぐことが期待されています。体軸性脊椎関節炎などの炎症性背部痛は運動で改善し、臥床や安静ではむしろ症状が悪化します。積極的に体を動かすリハビリテーションも重要となります。